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「七人の筆侍」について




●「七人の筆侍」について ― その1 ―

 子供の頃、私は祖父母と同居していた。テレビは家に1台というわけではなかったが、なぜか祖父の見るテレビが気になって仕方がなかった。それは時代劇ドラマや映画だった。昔は毎日どこかのテレビで放映されていたような記憶がある。子供の頃の遊びで記憶に残っているのは野球、鬼ごっこ、かくれんぼ、そしてチャンバラごっこだった。チャンバラ、語源は刀と刀があたる時の音からだそうだ。劇中で繰り広げられる戦いがまさしくチャンバラの醍醐味だった。それを子供ながらに真似ていたのだった。

 チャンバラ映画の主役と言えば当然侍である。侍とは元々寺を警護する人のことを指していた。つまり「さぶらう=おつかえする、そばにひかえる」人だったのだ。初期の侍は時間を持て余したぶらぶらしている人が寺をさぶらっていたのだが、やがて教養を身に付け天下を公家に代わって取らんとする頃には侍の位置付けも大きく変わっていた。侍は文武両道、ただ強いだけでは認められなくなったのだ。道理を弁えた者こそが真の侍と称されるようになった。戦国時代から1867年(慶応3年)10月、大政奉還に至るまで忠義忠孝に生きた侍が見せる人間模様が現代の我々に与える影響は絶大である。

 2002年から始まり今回2度目となる七人の筆侍が開く作品展に際して思ったのは、そのような侍精神を自分達に投影させ、武具は違っても”筆”を武具とみなす彼ら七人に”現代の侍”として敬意を表したいということである。
筆は彼らにとっては神聖な刀と同じなのである。筆をもって道理を説くと言っても過言ではない彼らの姿勢に感銘を受けた。しかもそれが決して固い歴史学的表現ではなく、あくまで彼ら七人個々のキャラクターを活かしたものであることがより一層彼らの意思が明確に伝わってくる。彼ら七人の絵師達が12年という歳月を掛けて行うことは必ずや世代を超えて人々の心に残ることだろう。


「堀江ジャンクション」編集部:永原達哉
(平成15年7月記す)
※これはノンフィクションです。




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